代々木上原のパーソナルトレーニングジム『BulkyLab(バルキーラボ)』です。
本日は「減量しながら筋肉を増やすことは可能か」についてお話をしていこうと思います。
目次
減量をしながら筋肉を増やすことは不可能説
多くのボディビルダーが体づくりのために「増量期」「減量期」と分けて行っています。
このように分ける理由として
「減量をしながら筋肉を増やすことは不可能」
と考える人が多いからだそうです。
ただ少なからず、我々の多くのお客様は「減量をしながら筋肉を増やすこと」に成功しています。
これに対して「トレーニング初心者のみがボーナスタイムで筋肉がつきやすく、この現象が起こる」とする人がいますが、これは本当でしょうか?
筋肉を増やしながら、脂肪を減らすできるか?を考察したレビュー論文
NSCAの発行するStrength and Conditioning Journalが「トレーニングを積んだ人(≠初心者)が筋肉量の増加と脂肪量の減少を同時に達成できるのか?」という内容でレビュー(1)を発表しています(オープンアクセスなので興味のある方はぜひ読んでみてください)。
※Strength and Conditioning Journal Volume42より一部抜粋
表を見るとわかる通り、トレーニング経験者においてFFM(徐脂肪体重)の増加とFM(脂肪量)の減少が同時に達成されているデータが多く紹介されています。
※徐脂肪体重の増加≒筋肉量の増加
実際に我々のお客さんでも生体電気インピーダンス法を用いた測定で、1ヶ月で筋肉量が2.2kg増加して脂肪量が4kg減少したお客様もいらっしゃいます。
従来、言われていたような「初心者」「過度な肥満」のような人でなくても、筋肉量の増加と脂肪量の減少は同時並行が可能です。
脂肪が減りつつ、筋肉が増えるメカニズムは?
脂肪が筋肉に変わる?
「脂肪が筋肉に変わる」こんなことを言うと、少し勉強をしている人からしたら笑われそうですが、案外おかしな話ではないかもしれません。
消費カロリー>摂取カロリー=体重減
これが減量の基本であることは、私もお客さんに口酸っぱく伝えています(後述するように例外もある)。
そんな基本があるにもかかわらず、アスリートにおいて
1日あたり消費カロリー>摂取カロリー=-20kcal
にもかかわらず体重が増加したという報告があります(2)。
これについて東京大学の寺田新先生の著書「スポーツ栄養学最新理論」(3)に以下のような記載があります。
体脂肪量(9.5kcal/g)をエネルギーとして使用し、徐脂肪量(1.0kcal/g、全身タンパク質量の増加、体水分量は変化なし)を増加させ、結果として負のエネルギーバランスにはなるが、体重が増加していることを示している。
つまり「脂肪が筋肉変わった」ということ。カロリー収支がマイナスでも、体脂肪はエネルギー密度が高いため、体脂肪のエネルギーが筋肉の合成に使われると筋肉が増えてかさ(体重)が増加するということですね。
これを考えれば、ダイエットをする人でカロリー収支をマイナスにして脂肪が減っても筋肉が増えるというということがわかります。
大幅な増量期は必要ない
ボディビルダーや本格的なトレーニーは慣習的に増量期・減量期と区分けしてトレーニングを行います。
彼らはコンテストがあり、極限まで体脂肪を削ぎ落とす必要があるので少なからず減量期は必要でこのような区分けも理解できます。
しかし一般の人が筋肉をつけて、脂肪を落としてかっこいい体を目指す上ではこの区分けは不要だと考えています(特に大幅な区分け)。
徐脂肪しながら筋肉を増やすことができるのは上述の通りですし、大幅な増量によるデメリットもあります。
増量することで体脂肪が増加すればインスリン抵抗性が増加し筋肉がつきにくい体になります。また一般的には増量して脂肪が乗った体よりも、絞れている体の方がかっこいいとされるでしょう。
増量期と減量期を区分するボディメイクと、それらを大幅には設けないボディメイクのどちらが効率的かの比較は難しいところですが、体に負担がかかる前者をあえて実施する必要はないのでは?と個人的に思います。
毎年恒例、野球オフシーズンの〇〇キロ増量成功!のニュース
これはアスリートなどにも同様のことが言えて、彼らにとって増やしたいのは「筋肉」のはずです。
毎年、冬の野球オフシーズンでは恒例ですが「〇〇選手〇〇kg増量!肉体改造に成功!」とニュースになります。オフの短い期間で増加するのはほとんどが脂肪です。試合がなく、体作りに励むには間違いなくこの間だとはいうものの、ここだけで筋肉が劇的につくこともなければ、シーズン中にトレーニングをやめてしまえば、筋肉は減少します。
増量の話にしても、減量の話にしても魔法のように劇的な変化が起こることはありません。地道な積み重ねが大事です。
ナチュラルボディビルダーがオフに20kg増量しても仕上がりは1kg増加したらいい方でしょう。オフにステロイドを大量にぶち込む、文字通り魔法を使うようなビルダーの真似をしても仕方がないように思います。
とは言え、エネルギー収支をプラスにすることが筋肉を増やすことに重要なことも間違いないです(4)。マイルドな増減量、増量の幅は開始時の徐脂肪体重10%ほどを個人的には推奨するところです。
まとめ
最後の方は極めて個人的な意見や主張が入ってしまいましたが、伝えたいこととしては「筋肉を増やしながら、脂肪を減らすことは可能だよ」ということ。
理想の体に向けて頑張りましょう。
(1)Barakat, Christopher MS, ATC, CISSN1; Pearson, Jeremy MS1; Escalante, Guillermo DSc, MBA, ATC, CSCS, CISSN2; Campbell, Bill PhD, CSCS, FISSN3; De Souza, Eduardo O. PhD1 Body Recomposition: Can Trained Individuals Build Muscle and Lose Fat at the Same Time?, Strength and Conditioning Journal: October 2020 – Volume 42 – Issue 5 – p 7-21
doi: 10.1519/SSC.0000000000000584
(2)Silva AM, Matias CN, Santos DA, Thomas D, Bosy-Westphal A, Müller MJ, Heymsfield SB, Sardinha LB. Energy Balance over One Athletic Season. Med Sci Sports Exerc. 2017 Aug;49(8):1724-1733. doi: 10.1249/MSS.0000000000001280. PMID: 28514233.
(3)寺田新. スポーツ栄養学最新理論, 2020
(4)Aragon, Alan A. MS1; Schoenfeld, Brad J. PhD, CSCS, CSPS, FNSCA2 Magnitude and Composition of the Energy Surplus for Maximizing Muscle Hypertrophy: Implications for Bodybuilding and Physique Athletes, Strength and Conditioning Journal: October 2020 – Volume 42 – Issue 5 – p 79-86
doi: 10.1519/SSC.0000000000000539